全脊麻

「ぜんせきま」と読む。

脊椎麻酔というのはいわゆる腰椎麻酔、腰から麻酔の注射をして

下半身だけに麻酔をきかせる手段。

昔は虫垂炎はこれでやったもんだし(今は腹腔鏡でやるから全身麻酔が主流)

帝王切開も昔はこれが主流だったけど、今は半分弱は全身麻酔かもしれない。

で、麻酔の聞いた部分は無感覚になるし筋肉が麻痺して動かせなくなるのだが、

もしも、あのながーい背骨全体、脊椎全体にこの麻酔がかかってしまうと、

胸の筋肉、肋間の筋肉なども麻痺して呼吸ができなくなる。

肺はなんともないけど、呼吸のために動く筋肉が麻痺するのよ。

だから呼吸が止まってほっとけば死ぬ。

無痛分娩は、脊椎麻酔でもやるけど主流は「硬膜外麻酔」。

硬膜とは脊椎を全体的に包んでいる膜で、

上記した脊椎麻酔はこの膜の内側、脊髄液の中に麻酔薬を入れる。

硬膜外麻酔は、膜の外側に麻酔薬を入れる。

薄い膜なのでゆっくりと脊髄神経にしみこんでいって麻酔がかかる。

いちばんの違いは、脊椎麻酔はいったん薬を入れると薬の効果時間が決まってしまうが、

硬膜外麻酔は「切れてきた」ら追加で薬を入れることができるので、

たとえばお産なんか何時間で終わるかわからない、予想がつかないけど、

もし長くなれば麻酔を追加できる。

帝王切開をこの硬膜外麻酔でやると、手術のあとも麻酔チューブを入れておいて

術後1,2日は痛くなったときにこのチューブから麻酔薬を入れたりもする。

便利で使い勝手のいい硬膜外麻酔ですが、ものすごーく注意しなきゃならないことは、

薄い膜一枚を破れば「脊椎麻酔」になってしまう、ってこと。

硬膜外麻酔はたくさんの麻酔薬をつかって膜の向こうまで薬をしみこませるのだが、

このたくさんな量が万が一脊髄液に入ったらすぐに上記した全脊麻で呼吸が止まる。

脊椎麻酔でたとえば帝王切開なら麻酔薬の量は2cc、

硬膜外麻酔なら15ccと言えば違いがわかりやすいかもしれない。

硬膜外チューブが脊髄のほうに入ってしまうことは実は珍しいことではない。

だから硬膜外麻酔をした場合、麻酔液を入れたあとでしばらく患者の状態を観察する。

一時的に「息が苦しい」と言うことは硬膜外でもよくあるけど、

酸素マスクでもするとすぐに落ち着くはず。

これが「どんどん苦しくなる、息ができない」となるともう「決まり」で

すぐに気管内送管といって肺に呼吸のためのチューブを入れて

換気バッグを手動で押すか呼吸機につないて強制的に酸素を送り込まないと、死ぬ。

この記事内で患者さんのだんなさんが言っているように、

もしもチューブから麻酔薬をいれて患者の側を離れたとすると、

それは非常にまずい。

無痛分娩は原則的に患者に医者がつきっきりで行う。

もし医者が何かの事情で患者の側を離れなくてはならないとしたら、

患者さんの呼吸状態をきちんと見れて「危ない」と思ったらマスクバッグで呼吸確保できるような、

そういうコメディカル(看護師さんとか)をおいとかないといけない。

もちろんマスクバッグでは長持ちしないので医者が駆けつけるまでの間に合わせに。

無痛分娩はだから、患者と医者が一対一の「ぜいたくなお産」なんです。

医者の数に余裕がなくマスクバッグができる手ダレの看護師もいないなら

無痛分娩は行うべきではないと思います。

無痛分娩自体はお産の方法としてはいい方法です。

陣痛の痛みで疲労してしまう程度を最低限にできるので、体力が温存されて

お産後の回復がよく育児が楽なはずです。

無痛分娩の事故、夫「人災」

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